2009年2月20日金曜日

「箱。」

連日のスタジオ作業。
自宅でも、ごそごそと作業。


かれこれ、2日間こもりっぱなしだったので、
累計24時間スタジオにいた事になる。
家を出たときは、
たしか晴れていた。

だけど、
帰るときは、土砂降りの雨がふっていた。
ちゃんと空、見てなかったなぁ。


今日は、新しい事をいろいろやってみた日。
実験するのは、できない最初は辛いけど。
だんだんはまってくると
すごく楽しいものにすりかわる。






そういえば、
肩書きにプロって名前がつき始めた最初の頃、
いっちょまえに音楽やってるクセに、
やれ、スタジオ作業とか、
やれ、作曲や作詞が大嫌いだった。ぼく。

さらにいうなら、
音楽を聴く事も好きじゃなかったし。
そう考えると、
なんで音楽やってたのかなぁ。

ただ、ライブで、
ギターをガーンと鳴らして、
バーンと歌って、
お客さんに褒められて。

どこまでもいけるっていう自信だけは誰よりもあったあの頃。

力強い仲間がいる。

支えてくれる人たちがいる。

そうさ、

自分の空は、どこまでも晴れ渡っている。






ように見えた。







だけど、
上京して、それだけじゃだめだってことがわかって。
楽しい時間は続かないんだってこともわかって。
大きな壁に突き当たって。先に進めなくなった。


じゃあ、どうすりゃいい?
ってなった時に。

ふと、足元を見ると
小さな「箱」が転がっていた。



それは
はじめて見るようで、だけど、
ずっとそばにあったような、
そんな、懐かしい感覚で
突然、僕の前に現れた。





ん?まてよ。


噂には聞いたことがある。

たしか、この「箱」は

「決断の箱」

という名前だったような。




これは自分の「今を変える」事が出来る魔法の箱。

ただ、

この箱を空けると同時に、

今まで自分が残してきた、
未来へ続く、ほかの道が全て閉ざされるらしい。


…。


目の前には壁。

これ以上先には進めない。

足元には、小さな箱が一つ。

ただ、もうひとつ。

「戻る」という選択肢もある。

今なら戻れる。


…。


どうするか悩んだ僕は、

箱を空けると言う選択肢をとった。






パカっと。


「!!!」



その箱を空けると同時に、

眩い光を放ち、

あれだけ晴れ渡っているように見えた僕の空を

どす黒い曇り空に変えた。

そして、

目の前が真っ暗になり、

いままで、見て見ぬふりをしてきた、

どろどろとした「現実」が

とめどなく湧き出してきた。



おしよせる、現実。

まったく見通しがつかなくなった、自分の道。

目の前に壁があるかどうかすらわからない。

ただ、歩けるようになったという。それだけ。


真っ暗な道をひたすら歩く。

あれだけたくさんいた人たちも

ひとりずついなくなってゆく。

歩いても、歩いても。

空はどす黒く渦巻いたままだ。

こないだのことなのに、

すべてのことがなつかしい。

もう戻れない。

もう、あの晴れた空には戻れない。

もう、あの晴れた空はここにはない。


青空を求めて

長~い旅の始まりだ。























なんて…。



今考えると、
長いようで短いような。

どす黒い空を抜け。
長い、曇り空を越え、
すこしずつ、すこしずつ。
青い空が見える街へ近づいている。


たどりついたその先に、
青い空が広がっているという保障なんて
どこにもないけどね。


きっと誰の前にも、その「箱」は転がっていて、
本当はいつでも開く事が出来るんだと思う。

だけど、
「空けないでおく」こともできるんだ。

そのほうが幸せな場合だってある、

きみは空けない。

おれは空けた。

わしは空けない。

君は空けた。


そんなものは人それぞれ。


そして、きっと「箱」は一つだけじゃないんだな。


それが、いいものか悪い物かは分からない。

ぼくは、箱を空けると言う決意をして。

その先を求めて、歩き始めた。


ただ、それだけのこと。


だけど。


それをすることを決めたんだ。



そして、


歩いてきた今がある。

足跡が残っている。

それでいい。



きっときみはダサいって笑うかもしれないけど。




あの頃思い描いた空とは

きっと違うかもしれないけど。






ぼくは、みつけるよ。